ー まずは、林 義和(はやし よしかず)会長、林 幹郎(はやし みきお)社長、この度のご就任おめでとうございます。
会長は1970年24歳の時に、社長は1993年34歳の時に、林建設に入社されていますが、何かその当時のことなどをお聞かせください。

会長:僕の入社した当時、林建設は合資会社で、言い方は悪いですが「掘っ立て小屋」のような社屋でした。面接に来た人が社屋を見てドタキャンして逃げ帰ってしまうほどでした。

1975年には2代目社長の林 茂と協力して現在の旧社屋の3階建部分を建築しました。当時の事は85周年インタビューでお話していますのでそちらをご覧いただければと思います。

85周年インタビュー記事

社長:今、話に出てきた3階建ての社屋は僕が高校生の頃にはできていました。ただ今のような曲線階段ではなく、3階から1階まで直線のいわゆる鉄砲階段というやつでした。途中でつまづくと1階まで走って降りないといけないような急階段でした。

林建設に入る前、私は九州のT建設さんにお世話になっていました。このT建設のT会長との出会いは、私にとっても林建設にとっても重要なものとなりました。当時は社長をされていましたが、普通私のような「建築屋の息子」が会社に入ってくると「育ててもいずれは辞めていく」という見方をするものですが、T会長はそうではありませんでした。「たとえ巣立ったとして、うちの支店がひとつ増えるようなものだ」と包容力のある言葉をいただいたこともありました。

私が林建設に入社した後も、林会長共々ご一緒に「人間学」を学ばせていただくことになり、現在でも多くの意見交換や貴重なアドバイスをいただく関係が続いています。

ー 以前のインタビューで会長からは、伊丹免許更新センターの建設がひとつのターニングポイントになったというお話を伺ったのですが、社長の印象に残っている仕事というと何になるでしょう。


社長:T建設では技術者として現場に出ていましたが、林建設では営業からのスタートとなりました。思い出に残っているのは、1995年の阪神大震災の時のことでしょうか。当時伊丹の地も大きな被害を受けており、特に木造の家屋はあちこち大変な状態になっていました。顧客の皆さんの所へ様子伺いを兼ねて回っていた時のことです。古くからお世話になっていた顧客様に「待っていた」「家の建て替えを考えていたんだ」とまだ契約書もできていない時から前金を振り込んでいただきました。林建設への期待を感じた瞬間でした。

最近の工事では2015年5月竣工の「大阪港赤レンガ倉庫改修工事」でしょうか。大阪港の古いレンガ倉庫群を改修し商業施設にしようという計画でしたが、村上常務と2人で現地を視察した時には「こんなんできるか?」と顔を見合わせたものでした。しかし営業担当や施工担当から補強の方法や工法などアイデアをもらって、やってみたら想いの他、上手く改修できたという感じです。施主にも満足してもらえました。林建設の施工の幅を広げた案件でもあったと思います。

ー 74期の林建設会社方針は「90年の歴史を受け止め更なる環境の変化に順応できる『いい会社』づくりへの挑戦」となっています。会長から社長へ引き継いでほしいものはなんですか?

会長:会社にとって経営理念は重要なものです。同様にスムーズに事業承継を行うことはとても難しく、だいたい数年前くらいから意思決定の方法を社長や常務その他のメンバーに意見を聞きながら作り上げるやり方に変えるなど、準備を進めてきました。そんな中で大切にしてほしいことも伝えてきたつもりです。

それでも、あえて言葉にするとすれば、そうですねぇ、一言でいえば「人のお役に立つ」という一言に尽きるかと思います。相手がどんなことを想っておられるかを知る努力をした上で、じゃあ自分は何を目指してやっていくべきかを考え、如何にお役に立つ仕事に繋げるか・・・と言うような事でしょうか。

社長:これは会長もよく言うことですが、建築というか建物の施工というのは、同じ図面でやればどなたがされても同じ結果、同じ建物ができるもんなんです。だけど、そこに「心を込める」ことで、違いが出てくる。

林にやってもらったら(うちの社員がやれば)、どことなく違うな、温かみというか作った人の人柄が伝わってくるな、とそんな仕事ができるように、社員の皆さんには人間力を鍛えてもらっているところです。

ー 時代や状況の変化に対する順応というところではどうでしょう?

社長:今お話したようなことは主には内的な要因の話です。ですが、もちろん外的には色々な変化や今日の新型コロナ禍のような困難もたくさんあるわけです。それに柔軟に対応していかなければならない。ダーウィンの進化論ではないですが、「もっとも強いものが生き残るのではなく、変化に対応できるものが生き残れる」のです。

(※編集者注 上記は進化論の内容とは異なっており、またダーウィンの言葉でもありません。進化論を独自解釈したアメリカの経済学者レオン・メギンソンの言葉であるとされています。)

奇しくも昨日誕生日のお祝いをしてもらったのですが、その時にお話させてもらったことがあります。

前社長はすごいバイタリティの持ち主で、まるで機関車のように会社全体を一人で引っ張っておられた。しかし、今はもう一人の強烈なリーダーが会社を引っ張っていくというような時代ではないだろう。これからは車両(社員)一台一台に動力がついていて、全部の車両の力でつまり会社全体でベクトルをあわせて進んでいく。しかもスピード感をもって。いわば新幹線のような経営スタイルを目指さないといけないのでないか。どうかそのために私に力を貸してほしい、とそう申し上げました。

会長:新社長は導入が上手いというか、人の話を引き出すのが上手い。上手く社員の皆の可能性を引き出してほしいと思っています。私も「バトンを渡し切った」とは考えていません。これまでと少し違うところに自分の持ち場を置きながら「入魂の日一日」を過ごしながら、新社長と会社の下支えをしていきたいと思います。新社長と一蓮托生です(笑)

ー 本日はありがとうございました。最後に林建設では読書が継続的な目標に掲げられていますが、お二人の愛読書やオススメがあればお聞かせください。

会長:葉室麟の時代物が愛読小説です。情があり、これからの自分に生きざまを示してくれているように思います。もう作品を3周くらい読んでますが、飽きない。というか、葉室麟さんはもう亡くなられているので、新作が出ないので仕方なくという部分もありますが何回読んでもそのたび新鮮です。

社長:私は基本的には推理小説が大好きで、昔から横溝正史や森村誠一などを読んでいます。オススメではないですが、社員にはマンガでもいいから読書しなさいと話してます。なんであろうと変わるきっかけになるものです。ショールーム代表の前田裕二さんが「読書とは行動を発芽させる養分である。」と言っておられましたが、私もその通りだと思っています。

(このインタビューは外部協力会社により行われました。)